技術的はことはもちろん、スクリャービンの5番は表現することが大変難しい曲です。スクリャービンの宗教観を表したこのソナタは、彼独特の和声語法でできており神秘主義の結晶でもあります。
演奏家によって解釈が違い、それぞれでかなり同じ曲とは思えないほど印象がガラリと変わる曲ですが、それだけに下手をすると聞いていられないほど音楽として成り立たなくなります。
変調も激しく、拍もコロコロと入れ替わり、スピード感のあるパートは熟練のピアニストでさえもミスタッチが出てしまう難曲です。
8位:ペトルーシュカからの3楽章・イーゴリ・ストラビンスキー
ペトルーシュカからの3楽章は、天才ピアニストアルトゥール・ルービンシュタインが「どの曲よりも難しくしてくれ」と依頼されて作られた楽曲です。もともとはバレエ音楽ですが、ピアノ用に編曲されています。
そしてこの難しくしてくれという依頼の通り、大胆な跳躍や散りばめられた不協和音、無理のある左手のトリルなどピアニストに要求される技術が高く、弾き手の体力的にもかなり消耗してしまいます。
依頼した張本人ルービンシュタインでさえ、演奏の完成度に最後まで納得していなかったのだとか。人気のある曲ですが、難曲中の難曲といって間違いないでしょう。
7位:メフィストワルツ・フランツ・リスト
作曲家でありピアニストでもあるフランツ・リストは、とても手が大きい人だったそうです。そのせいか彼の曲は男性の大きな手を想定して書かれていることが多く、オクターブ以上の音を弾かなければいけません。
特に小さな手の女性にはリストは難問だといってよいでしょう。メフィストワルツは聴いていても弾いていても大変華やかでダイナミックな曲。
テクニックを派手に見せつけるような構成になっているので、テクニックはかなり要します。さらに大胆に力強く弾かなければ恰好がつかないのでかなり体力も消耗する曲です。
6位:夜のガスパール・モーリス・ラヴェル
夜のガスパールは、バラキエフの「イスラメイ」の難易度を超える曲を!ということで作曲された超難易度の曲です。
アロイジウス・ベルトランの詩に触発されて書かれた曲ですが、詩の世界観を体現するかのような複雑で奇怪な音の跳躍や不協和音はラヴェルの印象派主義を顕著に表したもの。
特に第3曲の「スカルボ」は高速で指使いも激しいのですが、詩を表現した曲ですからテクニカルだけでは済まされないところが弾き手にとって大きな壁となって立ちはだかります。
5位:パガニーニによる超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」・フランツ・リスト
「超絶技巧集」と名づけられているのはダテではありません。ラ・カンパネラと同じく、難しすぎる版もあり現在よく演奏されているのはやや簡単になっているバージョンです。
とはいえ、今のバージョンでもかなりの難曲。違う版の難しさは桁違いであることは明らかです。一説には昔のピアノは鍵盤が軽くて今よりも弾きやすかったとか?
それにしても超絶技巧をふんだんに取り入れ、跳躍・音の強弱・変調・速度など全てがテクニカルで完璧に弾きこなすのは著名なピアニストでも難しいといわれています。
4位:トッカータ・アルカージイ・フィリッペンコ
あまり日本では知られていませんが、アルカージイ・フィリッペンコのトッカータは世界で最も難しい曲の1つに間違いありません。
曲の長さは3分にも満たない短い曲ですが、冒頭から最後まで息もつかせぬ高速弾きですごい迫力です。なかなか楽譜も手に入りませんが、機会があればぜひ挑戦してみたい一曲です。
迫力と華やかさがあるので、弾きこなせれば周りの人から賞賛されるのは目に見えています。ただし完璧に弾きこなせればの話ですが…。
3位:ピアノ協奏曲第3番の大カデンツァ・セルゲイ・ラフマニノフ
今でこそこの難曲は人気の曲になっていますが、発表当時はマエストロ級のピアニストでさえ弾くのがためらわれるというほど難しいといわれていました。
曲全体のスケールの大きさそして華やかさ、息もつかせない連続したフレーズ…。かなりの表現力とテクニックを要します。
また第一楽章はその難易度から、簡単な版も用意されています。大カデンツァと小カデンツァと呼ばれるものですが、コンサートで耳にするのはほとんどが小カデンツァだといってよいでしょう。それほど大カデンツァは難しい曲なのです。