モンゴルってどんな国?
モンゴルは、中国大陸にある草原の国です。正式名称はモンゴル国で、共和制。日本でいう都道府県にあたるアイマクという区分け制度で21つの地区に分かれています。
モンゴルの人口は300万人以上で、国土は1564000平方キロメートル。世界で19番目に大きい国です。複数の系統の民族が暮らし、複数の文化があります。
中国内にはモンゴル自治区があり、西にはウイグル自治区、北にはロシアが隣接しているので、四方を別の国に囲まれているといっても過言ではありません。そのため、多くの国から影響を受けてきた歴史があります。
宗教は主にチベット仏教ですが、イスラム教を主とする部族やシャーマニズム信仰の部族もいます。言語は、95%が使用しているとされているモンゴル語です。都市部にはビルが立ち並び、経済も発展していますが、地方では羊やラクダと共に遊牧民生活をする人も大勢います。
モンゴルは、日本と同じく四季がある国。しかしその気温差は激しく、夏は20度から40度と幅があり、冬はマイナス20度にまで冷え込むことも…。
また、乾燥しているため草木が育ちにくいことも、定住型の農耕生活ではなく遊牧民として羊毛や石炭・銅を資源とする生活をする要因となっています。
しかし、近年は国土の80%を占める草原地帯が砂漠化傾向にあり、モンゴル国内にあった植物のうち75%が消滅。また、河川の衰退も激しく、問題となっています。
そんな厳しい環境のモンゴルに伝わる、人々が生き抜くために用いられてきた民族衣装をご紹介しましょう。
モンゴルの民族衣装の名前は「デール」
モンゴル民族の民族衣装は、「デール」と呼ばれる丈の長い衣装です。モンゴルは多民族国家で、それぞれの民族の中でもさらに細分化されていて、柄や色合い、装飾品に違いが見られます。
基本的には、ウムドゥというズボンを履き、ゴダルと呼ばれる先の尖った膝丈のブーツを履いてから、足元まである長いデールの袖を折り返して着用します。最後に帯でデールを締め、被り物を被るという構成です。
デールは4箇所にボタンがついていますが、その位置は、首・右胸・右脇・右腰と決まっています。体に巻き付けるようにして着用し、ボタンの位置から、必ず左前になる作りです。落馬した際に怪我をしないよう、ボタン以外の金具は使われていません。
基本的にデールは縦襟で、乗馬中や夜間、冬の寒さから首元を守るようなデザインになっています。また、丈がとても長く、寝具や手ぬぐいの代わりにもなるんだそう。乗馬中に袖を出して鞭や手袋の代わりにすることもあります。
四季によって裏地の素材が違い、大きな気温の変化にも対応できるようになっています。また、男女用で作りに差異がないことも、デールの特徴の1つです。
男性用デールの特徴
男女差のないデールですが、やはりまったく差異がないわけではありません。
まずは、男性用デールについて見ていきましょう。
ゆったりとした作り
男性用デールはサイズが大きめ。動きやすいよう、ゆったりとした大きさで作られ、着付けもゆったりとしています。
無地や渋めの落ち着いた色合いが好まれるんだそう。また、青いデールは格が高いとされています。
男女で作りに大きな差異はなくても、男性が無地や渋い色合いを好むのは、日本人の和服に対する感覚と同じなのかもしれませんね。
帽子の名前は「ジャンジュン・マルガイ」
男性の場合は、頭に正装用の帽子を被ります。
「ジャンジュン・マルガイ」という、頭頂部がタマネギのような形をした帽子をかぶるのが習慣です。正装用の帽子とされていますが、日常生活でも着用されるのが常となっています。
女性用デールの特徴
基本的に男性と変わらない作りの女性用デールですが、女性らしさを強調したルックスが特徴です。詳しく見ていきましょう。
鮮やかなデザインが多い
無地や落ち着いた色合いが人気の男性用デールに比べて、女性用デールは鮮やかで派手です。模様があるものも多く、きらびやかな印象を受けます。男性は渋い色・女性は派手な色というのは、世界共通の衣類事情のようですね。
女性用デールは男性用に比べてスリムにつくられていて、帯もぎゅっとしめてタイトに着こなすのが主流。頭頂部に長い飾りのついた帽子を被ることもありますが、あまりに長く実用的ではないので普段は着用されていません。
また、モンゴルは争いにおいて女性が功績を残している国でもあります。戦いに参加して功績を残した女性は、肩にアーチ状の飾りをつけていたんだとか。肩の飾り以外にも、ツノのような飾りをつけた帽子で功績を誇ることもあったんだそうです。
独身と既婚者で違いがある?
女性の場合は、既婚者と未婚者でデールの着方が違います。
未婚女性の場合は、男性と同じく、ウムドゥというズボンとゴダルと呼ばれるブーツを履き、デールを着て帯で締めて完成です。
既婚女性は、ウムドゥとゴダル、そしてデールを身に着けるところまでは同じですが、帯を締めません。デールの上にウージと呼ばれるノースリーブの長い上着を着こんで完成となります。
絶対的な決まりではないようですが、既婚者と未婚者、それぞれの着こなしをするのが習慣です。
また、デールの着方が違うのは、既婚女性・独身女性だけではありません。今も遊牧民生活を続ける女性たちは昔ながらの着方をしていますが、都心部に住む女性は、ウムドゥを履かないんだそう。馬に乗る必要がないことが由来しているのでしょう。
さらに、都心部に住む女性たちは、ゴルダの代わりにパンプスを履くこともあり、チャイナドレスのようなルックスになることもあるんだとか。昔ながらの形を残しながらも、住む場所によって最適な形に変化を続けているんですね。