受精卵が着床し、赤ちゃんとして子宮の中で育っていく過程の中で、胎盤が形成されていきます。胎盤が完成すると、胎盤からプロゲステロンという女性ホルモンが分泌されるようになります。
プロゲステロンには基礎体温を上げる働きはあまりなく、この時期に突然体温が下がります。胎盤が完成するのは妊娠14週頃と言われています。
時折、ストレスやホルモンバランスの乱れで、14週未満で基礎体温が下がったという人もいますが、特に異常ではありません。同じ妊娠時期であっても、人によって体調も精神状態は異なります。
胎盤が完成する目安は12~15週を見ておけば間違いないでしょう。胎盤が完成すれば、基礎体温をつけて体調管理する必要はなくなりますが、妊娠中の不安は尽きません。何かあれば、必ず医師に相談するようにしましょう。
原因6:流産の可能性
妊娠していることが確認できたのに、低体温になってしまった場合、最も懸念されるのは流産の可能性です。ただ、高温期が維持されなくなったからと言って、即座に流産に結びつけるのは早計です。
ただ自然流産の約8割が、妊娠12週までに起こると言われており、妊娠初期に当たる4週・5週・6週は22~44%の確率で起こるとされています。
自然流産が起こるのは、大体が受精卵の染色体異常が原因です。そのため受精卵が十分に育ち切らず、流産に至ってしまうのです。決してママが何かしたから、流産になるわけではありません。
年齢別に見ると、35歳以上だと自然流産率が20%、40歳以上だと40%以上と上がる傾向があります。高齢出産する女性の割合もかなり増えてきたとは言え、35歳以上の妊娠は慎重に経過をチェックする必要があるでしょう。
妊娠初期の体温Q&A
妊娠初期の体温に関する疑問を、東京医療保健大学の米山万里枝教授にお伺いしました。
Q1:妊娠初期(妊娠12、13週頃まで)の日中の体温変化は気にしなくてOK?
妊娠するとプロゲステロン(妊娠維持をするホルモン)が分泌され、高温期が続きます。高温期が2週間以上続いていたら妊娠の可能性は高いです。
妊娠すると、母体は、妊娠をキープするために平均36.7度くらいの高温状態を保ちます。これは、ホルモンの影響によるものです。
妊娠すると基礎体温は高温期を維持するのが一般的ですが、急に体温が下がったと言って、必ずしも流産しているとは限りません。
妊娠初期の高温期に基礎体温が突然下がる原因としては、流産以外に、①もともと基礎体温の変化が少なく、高温期・低温期の判断が難しい、②高温期の7~10日ごろの1~2日、着床時に一時的に体温が低下、③基礎体温が正しく測定できていない等が考えられます。
しかしながら、高温期から急に体温が低下し、下腹部痛や不正出血などが見られる場合は、流産の可能性が考えられます。妊娠が確定されても、妊娠初期の12週頃までに基礎体温が平熱に下がるようであれば一度、産婦人科を受診する必要性があります。
Q2:妊娠初の低体温ってどのくらい?35度は低すぎる?
妊娠すると、母体は、ホルモンの影響によるもので妊娠をキープするために平均36.7度くらいの高温状態を保ちますが、妊娠初期は高温期といっても個人差があります。
妊娠前から元々低体温の場合は、一般的には36度5分からがひとつの目安となりますが、これよりも体温が低い場合もあるので、過度な心配はいりません。
妊娠初期で突然体温が下がっても、すべてが流産によるものとはいえません。妊娠や基礎体温の変化には、個人差があります。
しかし、35度が続く、下腹痛や不正出血など、気になるときはすぐに医師に相談してください。
妊娠初期に低体温を心配する方の場合、体温の計測時間が一定でないことがあります。基礎体温を記録する場合、必ず婦人用の基礎体温計を使用し、計測時間は、必ず寝起きであることは大前提です。
Q3:妊娠初期の体温が37度は大丈夫?
健康的な人の体温は36.5〜37.2℃くらいであり、個人差があるので一概には言えませんが、37℃は発熱ではありません。
一般的に36℃以下が低体温だといわれており、現在この低体温の人が増えています。低体温だと血流が滞り、細胞に必要なものが血液で隅々まで運ばれなくなり、体調不良につながります。
体温と免疫細胞は大きく関わっており、放置すると様々な病気を引き起こす可能性があります。ちなみに欧米人の平熱は38℃といわれていて、欧米人はたくさん食べますが、必ずしも肥満にならないのは平熱が高く基礎代謝が高いためです。食欲は様々な欲と比例すると言われているので、欧米人が陽気なのも納得です。
妊娠初期に高温期となるのは、黄体ホルモンがたくさん分泌されており、赤ちゃんを育てるための胎盤機能が作られているからです。胎盤機能を作るためには黄体ホルモンがたくさん必要になり、多く分泌されることで必然的に体温が高くなります。
Q4:基礎体温が下がったのに生理が来ない場合は妊娠?それとも病気?
女性の体温は、生理周期にしたがって規則的に変化します。ホルモン分泌に異常がなく、生理周期が規則的である場合は低温期と高温期の二層に分かれます。
低温期は生理が終わり、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が活発な時期であり、高温期はプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響で、排卵日を境に高温期に入ります。プロゲステロンは体温を上昇させ、黄体期の体温は卵胞期に比べると約0.3℃~0.5℃高くなります。
このようにプロゲステロンは子宮を妊娠に適した状態に整え、受精卵が着床しやすい状態にします。
基礎体温が下降するとともに月経開始する人も、1週間程度して月経が来る人もいます。基礎体温と月経開始には個人差があるため、1週間程度の誤差は異常ではなく一般的なことです。
基礎体温と月経周期が規則正しい人も、ストレス・寝不足・旅行など、いつもとの生活習慣の違いが原因となることもあります。
また、ホルモンの異常だけではなく、基礎体温の測定方法に問題があるのかもしれません。毎日、正しい測定(朝、起床前の安静にしている状態、舌の裏側に体温計をはさみ、口を閉じて測定、同時刻)し、正しい基礎体温と体のメカニズムを計り知ることができるものです。
基礎体温が下がっても月経がこない、なかなか妊娠に結び付かない等の悩みを持つことは、ストレスや精神的に不安定につながることもあります。様々なことに身体は影響を受け、基礎体温やホルモンバランスの乱れに繋がることもあります。栄養バランスや睡眠・リラックスなどの体調管理をすることは大切です。
基礎体温はあくまで目安。妊娠初期に下がっても慌てないで!
妊娠がわかって、高温期が続いていても、なぜか基礎体温が下がることがあります。体温が下がっただけなら、まずは慌てず様子をみましょう。
ただ、体温が下がる以外にもおかしな兆候が見られたら、たとえ勘違いでもいいので、まずは病院を受診するのが賢明です。お腹の赤ちゃんを守れるのはママだけです。小さなサインを見逃さないようにしましょう。