『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は2013年に発表された13作目の長編で、主人公の多崎つくるが、高校の友人4人から絶縁宣言されたことから始まる物語です。
この作品では仲良しグループから突然絶交される、殺人事件が起こるなどのミステリ的要素が散りばめられています。村上春樹さんの作品は幻想的な世界観のものが多いですが、これはリアルに近い世界観なので、ファンタジーが苦手な方でも手に取りやすいですよ。
第11位:螢・納屋を焼く・その他の短編 改版 (新潮文庫)
『螢・納屋を焼く・その他の短編 改版』は1987年発表の短編集で、表題の2作を含む、1983~1984年に書かれた5作品が収録されています。
学生寮での日常を描いたものから小人が登場する不思議なものまで、村上春樹さん独特の世界観がギュッと詰まった1冊です。中でも表題作の『螢』は大ヒットした『ノルウェイの森』のベースになっているので、気になる方は読み比べてみると面白いですよ。
第10位:海辺のカフカ 上 (新潮文庫)
『海辺のカフカ』は2002年に発表された10作目の長編で、ギリシャ神話のエディプス王の悲劇と源氏物語などの日本の古典をベースに描かれた物語です。この作品は15歳の少年「カフカ」が主人公の章では一人称、知的障がいのある男性「ナカタ」が主人公の章では三人称と、変わった体裁で物語が進んでいきます。
タフな少年になるために家を出たカフカ、ある事情から地元を離れたナカタさん、接点のない2人はどうつながっていくのでしょうか。上巻は文中に散りばめられた謎を探しながら読んでみて下さい。
第9位:1Q84 a novel BOOK1 前編 4月-6月 (新潮文庫)
『1Q84 a novel BOOK1 4月-6月』は2009年から2010年にかけて発表された12作目の長編で、3部作の第1弾です。離れ離れになった少年と少女が、再会を果たそうとする物語です。
この作品ではスポーツインストラクターとなった少女・青豆の話と予備校講師となった少年・天吾の話が交互に語られます。仕事の傍ら暗殺業も請け負う青豆、小説家を目指し投稿を続ける天吾の2人が迷い込んだ「1Q84」の世界とは…。丁寧な人物造形と濃密な感情描写で、物語の世界にぐんぐん引き込まれていく作品です。
第8位:ノルウェイの森 下 (講談社文庫)
『ノルウェイの森』は1987年に発表された5作目の長編で、上下合わせて国内で1,000万部を記録し、村上春樹さん最大のベストセラーとなりました。この作品は男性が大学時代の恋愛を回想する物語。1987年には松山ケンイチさん主演で映画化されました。
亡くなった友人の恋人と逢瀬を重ねる主人公。その一方で大学の同級生に心魅かれている自分に気付きます。最後に主人公はどの女性と結ばれるのでしょうか。強い愛や生と死が私たちの身近にあると、改めて感じさせてくれるラブストーリーです。
参考記事:愛のかたちについてもっと知りたい方はこちらもどうぞ
第7位:本当の翻訳の話をしよう
『本当の翻訳の話をしよう』は2019年発表の作品で、東大名誉教授で翻訳家の柴田元幸さんとの対談をまとめたものです。
村上春樹さんは小説家としてだけでなく、翻訳家としても多くの本を出しています。この対談集で翻訳についてだけでなく、小説を書くにあたっての考え方など、ファンなら気になる内容が随所に散りばめられています。ファンだけでなく、小説家や翻訳家を目指す人にもおすすめです。
第6位:風の歌を聴け (講談社文庫)
『風の歌を聴け』は1979年に発表された長編で、第22回群像新人文学賞に輝いた村上春樹さんの記念すべきデビュー作です。帰省した主人公が、偶然ある女性と夜を共にしたことから始まる青春ストーリーです。
1960年代の日本を舞台にさまざまなエピソードが断片的に綴られた作品で、随所に見られる「余白」の部分が読者の想像力を刺激します。
文学賞の選考では賛否が分かれましたが、それも作品の持つ「力」だったのではないでしょうか。読む際はネットなどによる予備知識なしの状態がおすすめです。