例年緊急搬送約5万人の「熱中症」
熱中症とは、高温環境下で体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、体温調整機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。
例年日本では、約5万人が熱中症で救急搬送され、近年はさらに増加傾向です。
野崎 豊 先生 (ノザキクリニック院長)
日本小児学会専門医/認定産業医/日本体育協会公認スポーツドクター/日本東洋医学会 名誉会員/漢方専門医/臨床内科医会専門医。現在、兵庫県加古川市でノザキクリニックの院長を務める。
今年は家の中での「おうち熱中症」に要注意
外出自粛やテレワーク・休校によって自宅で過ごす時間が増えていますが、実は熱中症発生場所の約5割が「住居・屋内」。
人間は発汗以外にも皮膚及び呼気から水分を失っています。これは不感蒸泄と呼ばれ、意識しなくても起こることなので汗をかいていなくても水分補給は必要となります。
「おうち熱中症」は熱や湿気がたまりやすい場所でなりやすい
おうち熱中症は、浴室、トイレ、2階以上の日当たりの良いところなど熱や湿気がたまりやすい水回りが要注意場所です。
入浴・睡眠中の脱水にも注意しましょう。
「おうち熱中症」を防ぐ3つの予防法
予防方法
- カーテンや遮熱フィルムで太陽の光と熱を遮断する
- 網戸などで風通しを利用する
- 室内に冷房を24°C~28°Cで入れる
「巣ごもり明け」も熱中症になりやすい!
例年、熱中症は梅雨入り前の5月頃から発生し、梅雨明けの7月中旬から8月上旬に多発する傾向があります。
ところが、今年は外出自粛やテレワーク・休校で体が暑さに慣れていないため、社会活動が再開された巣ごもり明けのタイミングで熱中症が多発すると予想されています。
熱中症は高温環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻することで起こるため、上手に汗をかくために暑さへの慣れが必要です。
熱中症患者の半数は高齢者!子どもも1割
2019年の熱中症の発生年齢区分を見ると、高齢者が約5割と約半数を占め、また自分で体温調節が難しい子どもも約1割いることが分かります。
また、2017年東京消防庁のデータでは、5歳以下の子どもは45%(n=20)、65歳以上の高齢者は55% (n=1,534)が住居等居住場所で発生しています。
3密を避けて畑仕事や庭の除草作業、ジョギング、ベランダBBQを楽しむ方は、服装・水分補給に特に注意が必要です。帽子は時々はずして汗の蒸発を促しましょう。
高齢者の熱中症理由は「感覚の鈍りや身体機能の低下」
・「暑い」と感じにくくなる。
・体温調節が鈍る。
・発汗量・皮膚血流量の増加が遅れる。
・発汗量・皮膚血流量が減少する。
・体内の水分量が減少する。
・のどの渇きを感じにくくなる。
このような理由から、高齢者が熱中症にかかりやすいのです。
出典:2019年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況(消防庁HP)