舞台関係者と観客の新型コロナのクラスター発生
3密を回避しにくい演劇業界の未来
- 新宿での舞台クラスター発生により演劇業界全体に波紋が広がる
- 自粛要請に伴い補償をするも、演劇業界の破綻が相次ぐ
- STEP3以降のイベント開催規制の緩和は当面延期に
舞台関係者と観客の新型コロナのクラスター発生により、演劇界は大きな打撃を受けています。クラスターは6月30日から7月5日に東京都新宿区で開催された舞台で発生しました。
舞台のタイトルは「THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ:bangbang:―」です。これまで演者16名のほか舞台関係者5名、観客16名の感染が確認されました。劇場では活動が再開され始めた時点での感染拡大にショックを隠し切れません。
また、8月1日にイベント開催の規制緩和がされる予定でしたが、7月の感染状況により当面の間、STEP3での規制が続く見通しとなりました。
新型コロナにより打撃を受ける演劇業界
演劇業界ではコロナの非常事態宣言の1か月以上前から自粛を行っていました。再開後も3密を避けるため、公演中止や規模の縮小が相次いでいる状況です。
舞台でだけでなく映画業界も大きな打撃を受けています。2020年3~5月決算において、大手の東宝は前年度比98%の減収が報じられました。
演劇業界のガイドライン徹底遵守の難しさ
演劇業界ではコロナ防止にかかる、ガイドラインの徹底遵守の難しさが浮き彫りとなっています。舞台上では演者同士が近い位置に距離を取り、大声を出すことも少なくありません。
また、音や光の漏れを防ぐため休憩時間以外での換気は行うことができず公演中は密室空間にあるため、舞台での3密は避けられないのが実態です。
今回クラスターが発生した劇場でも検温や消毒の徹底、最前列の観客へのフェイスシールドの配布など感染対策は行われていましたが、演者同士の距離感の近さや休憩時間のみの換気が不十分だったのではという指摘がされています。
コロナ禍における新しい演劇のカタチ
演劇業界ではコロナ禍における新しい演劇のカタチが求められています。コロナの猛威は止まるところを知らず、今後はコロナとの共存が課題となるでしょう。
もちろん1日も早い終息が求められますが、これ以上の足踏みは演劇業界の衰退につながります。そこで演劇業界が試みる新しい演劇のカタチについてまとめてみました。
舞台構成の変更
新しい演劇のカタチの先駆けとなるのが、東京都渋谷のPARCO劇場で開催される三谷幸喜氏の最新作です。タイトル「台地(Social Distancing Version)」からもソーシャルディスタンスを意識していることがわかるでしょう。
例えばケンカのシーンでは、取っ組み合いを避け枕投げに変更され、セットも換気を意識した作りがなされています。この舞台をヒントに今後開催される舞台では様々な工夫が施されていくことが予想されます。
夏の新舞台も続々上演開始
8月から再開される歌舞伎座では、本来2部性が基本のところ4部制が導入されます。さらに約1800人のキャパを800人程度に縮小され、3密の回避に努めることになりました。
また、「科白劇(かはくげき) 舞台『刀剣乱舞/灯(ともしび)』綺伝(きでん) いくさ世の徒花(いくさゆのあだばな) 改変 いくさ世の徒花の記憶」ではキャストがフェイスシールドを付けての上演、映像を利用したアクションでの新しい舞台構成で7月16日から公演を始めています。
オンライン配信
舞台のオンライン配信も新しい演劇のカタチといえるでしょう。音楽業界では既に様々なアーティストが無観客でのオンライン配信をスタートさせています。演劇の世界でも徐々にオンライン配信が増えているのが実態です。
前出の三谷幸喜氏作の「大地」は劇場と同時のオンライン配信が予定されています。ライブ配信であるため、従来のブルーレイ鑑賞とは違った緊張感が期待できるでしょう。
因みに本多劇場で行われた一人芝居のオンライン配信は約6000人が参加しています。いかにライブを見たい人が多いかが浮き彫りになった事象といえるでしょう。
リモート・オンライン演劇
リモート・オンライン演劇とは、劇場を使用せず会議システムZoomなどを利用して完全リモートで行われる演劇です。小劇団を中心に行われており、YouTubeなどでも視聴できます。
一部のテレビ・ドラマでも苦肉の策として放送されていました。そのため実際に観た人も多いでしょう。リモートならではのストーリー展開と、演者の演劇に対する熱量が芝居に伝わり秀作が多いのが特徴です。
今後は小劇団だけではなく、メジャーな劇団によるリモート・オンライン演劇も期待されています。新たな演劇スタイルとして確立されることもあり得るでしょう。