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日本の社会では、まだまだ事実婚を選ぶ人への偏見が根強く、変わり者扱いされたり好奇の目で見られたりします。これが、事実婚のデメリットその④です。
事実婚はただの同棲と異なり、れっきとした夫婦になることですので、友人知人にも、ご近所付き合いでも、お互いを『夫です』『妻です』と紹介することになります。でも苗字は別々。するとそれを知った知人やご近所は、あなたたちがなぜそんな『変わったこと』をしているのか知りたがります。無遠慮に質問して来るかも知れません。
また、デメリット②でも書いたように、夫が主な働き手で妻が専業主婦などの場合、年金や健康保険で扶養扱いしてもらうため、会社で手続きをしてもらいますが、この時も妻が事実婚の内縁の妻だと、人事部の担当者がめんどくさがり、イヤミを言われたりします。『なんでそんな中途半端なことをやってるんだ?』なんて怒り出す上司もいるかも。
夫が公務員や大手企業の社員なら、事実婚という選択を尊重してくれるようですが、それでもある程度の説明や煩わしさがつきまとうことは覚悟しておくべきでしょう。
事実婚のデメリット⑤将来の不安
ここまでで説明したように、事実婚を選び、内縁の夫、内縁の妻という立場で長く一緒に暮らしても、法律婚に比べて関係の不安定さはずっと続きます。これが、事実婚のデメリット⑤です。
また、想像したくない話ですが、もし夫に他に好きな人ができた場合、法律婚をしている夫婦だと、妻に離婚を同意してもらい、離婚届を出した後でないと、新しい恋人と夫婦になることはできません。妻が納得しなければ離婚調停などに発展する場合も。
ところが事実婚の場合、夫は結婚を解消したいと思えば家を出てしまえばいいのです。そしてその翌日にでも、その女性を入籍させ、法律婚をすることができます。
もちろん、こんな風に一方的に結婚生活を終わらせたら、妻は夫に慰謝料や財産分与を請求できます。でもそれは、請求する権利があると言うだけで、夫が責任を認めなければ、裁判を起こし、裁判所にふたりが事実婚の夫婦だったという証拠を出さなければなりません。
こうした立場の不安定さというデメリットを完全になくす方法は、今のところありませんが、せめてもの対策として、ふたりが事実婚の関係にあることを契約書に残しておく、という方法があります。
事実婚契約書って?
事実婚でも、法律婚でも。結婚はある意味、契約のひとつとも言えます。
法律婚の場合、婚姻届を出した夫婦の関係は民法などの法律で強く保護されているため、わざわざ契約書をつくる必要はありませんが、事実婚ではそれがありませんので、最低限の約束ごとを契約書の形にしておくことをおすすめします。
この契約は『事実婚契約』『内縁関係契約』などと呼ばれ、現在では弁護士、司法書士、行政書士などの法律家が作成してくれます。(ネットのサイトで解説しているところもあります)
ふたりが夫婦であることが、法律家が作った契約書に書いてあることは大きな安心感になりますし、またデメリット⑤で書いたように、ふたりの間に争いが生じ、裁判になったときには証拠にもなります。
契約書だなんて、最初からお互いのことを疑っているようでイメージが悪いと思うかもしれませんが、いまはラブラブのふたりでも、長い間にはどんなことが起こるかなど、誰にもわかりません。
これから事実婚の夫婦になろうと考えているあなた。夫となる人と、ぜひ一度、この事について話し合ってみてください。
【まとめ】事実婚と法律婚 どっちを選ぶ?
以上で説明した通り、事実婚と法律婚、そのどちらにもメリットとデメリットがあり、何かを優先すれば、何かを犠牲にしなければなりません。
何を優先させるかは、ふたりで話し合って決めるしかありませんが、人生の時期によって、メリット、デメリットの重さ、意味合いもまた変わってきます。
たとえば、今、営業的な仕事をしている女性が、やがて退職したり事務的な仕事に異動になったりして、姓を変えてもそれほどデメリットにならなくなる場合もあります。仕事を辞めて、夫の扶養家族になることも。
また子供ができる前と後では、ふたりの関係も大きく変わります。
今は激しく反対している親きょうだいも、ふたりが事実婚の、内縁の夫、内縁の妻として長く仲良く暮らしているのを見て、やがて態度を軟化させるかもしれません。
そこで、事実婚契約書に、『子供ができたときは』とか『親の許しが得られたときは』などの前提で、法律婚に移る時期を明記しておくこともできます。
いずれにしても、今目の前の状況だけで安易に決断するのは禁物です。
先々のことまでよく考えて、ふたりにとって一番いい方法を選択できるように、がんばってください。