「一本締め」のセリフにある「いよーっ」とは?
一本締めは、「お手を拝借・・・」のあとに「いよーっ」と掛け声を上げることで、参加者の音頭をとるやりかたになっています。じつは、この「いよーっ」というセリフにも意味があり、実は「祝おう」という言葉がなまってできたと言われています。
やはり、仕事の宴を無事に終わらせることを祝う目的があってこその「一本締め」、ということがよくわかりますね。
「一本締め」の由来はよくわかっていない
一本締めは、冠婚葬祭で行われる「三本締め」を略したものだという説が濃厚です。しかし、その説を裏付けるほどの記録が残されていないのが実情です。ただ伝統的に、鳶職人の世界に伝わる労働歌「木やり」に続けて「一本締め」が行われてきました。
そのため、正式にその場をきっちり丸くおさめたいときは、一本締めの前に「木やり」を行うこともあるそうです。しかし、我々一般人には程遠い世界、と言わざるを得ないでしょう。
では、「一丁締め」とは何だろう?
挨拶「一本締め」の本来の意味やセリフがわかったところで、次は「一丁締め」の解説に移りましょう。
「一丁締め」は、別名を「関東一本締め」とも呼びます。「え?一本締めと違いはないの?」と思われがちですが、やり方はまったく違います。そう、コレこそが、ページの冒頭で例に挙げた、「お手を拝借・・・いよーお。パンッ!」と「1回」拍手するやり方の挨拶なのです。
この「一丁締め」は、拍手による仕事の挨拶を簡略化して作られた掛け声です。あくまで簡略化して使用されるセリフなので、ホテルなどフォーマルな宴会の席では行われないやり方です。
たとえば、内輪の小規模な宴会などは、参加する人数も少ないでしょうし、一丁締めを行うには格好の場所です。
また、一本締めでは大きな拍手の音が10回も鳴り響くため、いくら仕事の締めであっても、周囲への配慮がなされていない、という見方をされることがあります。そのため、時と場所を考えて、一本締めから一丁締めへ挨拶を変更する場合もあるようです。
「一本締め」と「一丁締め」の違いを知らない人が続出!
最近は、「一本締め」の挨拶を「一丁締め」のやり方と勘違いする人や、そもそも「一丁締め」の名称自体を知らない人が増えてきています。これは、テレビの映像で「関東一本締め」の映像が頻繁に放映されるようになったことと無関係ではないでしょう。
仕事のお偉いさんっぽい人が「一本締めを・・・」と挨拶し、「お手を拝借」、そして大きく「パンッ!」と拍手をして終わり。この「関東一本締め」の掛け声が、そのまま「一本締め」と見なされてしまった・・・ということです。
もしくは、プロ野球のキャンプ終了時に「お手を拝借」から始まる一丁締めが行われることもあります。
または、テレビドラマの一場面で、一本締めや一丁締めの区別を示さないまま、一丁締めの大きな拍手が打たれることもしばしばです。
些細な呼び方の違いが、全国区に誤解を招く結果になってしまいました。つくづく日本語の難しさや、ややこしさを実感します。
「一本締め」と「一丁締め」のタブーとは?
ここまで、一本締めや一丁締めの本来のやり方を解説してきました。しかし、この解説だけではまだ不十分です。まだ、一本締めと一丁締めの挨拶でやり勝ちな「落とし穴」が存在します。
一本締めや一丁締め、通称「手締め」と呼ばれるこの掛け声のあと、参加者全員から「拍手」が沸き起こることがあります。手締めを行った人が、掛け声と拍手のあとに「ありがとうございました~」と言って自分から拍手を始めること、よくありませんか?
じつはコレ、一本締めと一丁締めでせっかく「丸く」おさまった宴会の席を壊してしまう行為なのです。
一本締めの本来の目的は、10回の拍手で「丸」の漢字を完成することでした。しかし、その挨拶のあとに更に拍手をしたらどうなるでしょう。「丸」の漢字に余計な画数が加わってしまいます。縁起を担いだつもりが、なんの意味もなくなってしまうのです。
一本締めや一丁締めのあとに拍手をすると、一度丸くおさまったものがまた「開いて」しまう、という表現を使うことがあります。拍手も同じ手締めの方法の一つではありますが、一本締めや一丁締めのときの不必要な拍手はタブーなのです。