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平安時代にできた作り物語の一つで、全四巻と短いですが、主人公・狭衣の悲恋物語です。
作者は不明とされていますが現在では源頼国の女(むすめ)とする説が有力です。その話は源氏物語の宇治十帖の主人公・薫に性格がよく似た主人公の恋のお話です。
主人公の狭衣(帝の弟の息子)と、当初彼が惚れていた帝の娘(源氏の宮)がいとこ同士ですが、その恋愛は成就せず、狭衣が振られるという悲恋に終わります。(惚れていた女性が皇太子の妃に望まれていた為)
狭衣の婚約者はいとこの女二宮(帝の娘)ですが、源氏の宮を愛していた狭衣はこれを拒否。しかし姿を見ると一変、運命だと彼女のところに出向き子供を作ってしまうから驚きです。
子供が出来てしまった衝撃を受けた女二宮は彼を拒絶してしまいます。
物語の最後は、狭衣は帝になり、彼の子も次の皇太子になるという栄華を極めた状態で終わります。
しかし彼の心は愛していたいとこの源氏の宮や女二宮の二人の女性にあったということでした。
平安時代の話ですからいとこ同士の結婚もざらにありました。
むしろこの頃は血をより濃くするために同母でなければOK(異母兄妹の結婚も当たり前)という時代でしたから驚きです。
恋愛感情も互いにあったでしょうが、まずは家の為ということです。
【いとこは恋愛対象?】いとこ同士の恋愛作品Ⅱ
風の輪舞(ロンド):作者 津雲めぐみ(集英社)
1995年と2006年にドラマ化されている津雲めぐみさんの漫画作品です。
いとこ同士の恋愛を描いた傑作でもあります。
過去編、現代編と二部構成になっており、原作は現代編から過去編につながっていく構成ですが、ドラマでは過去→現代とつながっていきます。
現代編の主人公・野代夏生(なつき)とそのいとこ野代英明(ひであき)の恋愛を描いていますが、何故か二人の恋愛はそれぞれの両親(夏生の父・大介と英明の母・麻美)にタブーだと反対されてしまいます。
英明の母・麻美(あさみ)のひどい妨害もあり、夏生は英明との恋愛を断念。弟を連れて家を出ますが数年後、外国で結婚した英明と再会。くすぶっていた恋愛感情は止められず、いとこにして不倫関係を結ぶ―――という事に。
しかしそれを知った麻美は息子の英明を刺殺し自宅に火を放って彼と心中してしまうのです。
何故麻美は息子と心中するという狂気に出たのか、どうして大介や麻美は夏生と英明の恋愛を許さなかったのか―――それは二人の過去にありました。
野代麻美という女性がとにかく恐ろしくも悲しい女性です。
1996年のドラマでは新藤恵美さん、2006年のドラマでは田中美奈子さんが演じています。
主要二人はいとこ同士ですが、そこにいたるまでのすさまじい歴史には圧倒されます。
最終的には英明の死という事でこの二人の恋愛には決着がつくのですが、感情が芽生え、運命だと感じていても、周りの人間の賛成がなければここまで引き裂かれてしまう、悲しいお話です。
【いとこは恋愛対象?】おまけ
先ほど上がったいとこ同士の恋愛を描いた作品。
あまり紹介はできませんでしたが、その大半は悲恋で終わる傾向があります(あげた二つもまさにそれでした)
いとこ同士の恋愛は日本文学以外にも世界文学にもちらほら見られます。
その中でも名作をひとつ紹介します。興味があれば読んでみるのも面白いと思います。
紅楼夢:作者 曹雪芹
主人公・賈宝玉が自身の豪邸に住む十二人の美少女たちと風流生活を送る話です。
物語の主要人物かつメインヒロインの林黛玉は賈宝玉のいとこ。
二人は相思相愛だが性格も相まって互いの気持ちを伝えられません。
ひかれあう二人だが些細な嫉妬から大喧嘩をしてしまい、結果病弱な林黛玉は失意のまま死亡してしまいます。
中国四大名著の一つでもあり、中国では何度もドラマ、舞台化されているほどの人気ぶりです。
【いとこは恋愛対象?】最後に
いかがでしたでしょうか。
たまたま身近にいた、とても仲の良い異性。
そんな幼少の頃の恋愛感情を持ち続けて結婚したいと思う女性も多いと思います。
いとこ婚はその相手がたまたまいとこだったという事だけです。
しかし今あげたように「いとこ同士の結婚」は通常の恋愛からなる結婚とは違い、様々なしがらみ、リスクが生じます。
それらをきちんと理解し、一時期の感情論ではないと確信したうえで、この人と一生を添い遂げるという強い覚悟を持って結婚しなくてはいけません。
ですが、いとこ同士とはいえ、人生の中で心から愛する人と巡り合える事は一生のうちに一度あるか二度あるかくらいでしょう。
そのチャンスをどうするかはあなた次第。
もしかしたらあなたのすぐ近くにいるいとこと結婚している未来も―――あるかもしれませんよ?